AWS(Amazon Web Services)の運用方法として、外注する方法と社内で対応(内製化)する方法の2種類あります。しかし、内製化を進める際には課題もいくつかあり、「そもそも、本当に内製化すべき?」「AWS運用の内製化の手順は?」と、疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。 本記事ではAWS運用の内製化について、内製化するメリットや導入ステップ、内製化に役立つ支援サービスをご紹介します。
AWSの運用は内製化可能?
結論からお伝えすると、AWSの運用は内製化可能です。実際に、外部委託ではなく自社リソースを使い、AWS運用業務を行っている企業も多く存在します。
そもそもAWS(Amazon Web Services)とは、Amazonが提供するクラウドサービスです。ストレージ・データベース・サーバなど多岐にわたるサービスを提供しています。
マーケティングリサーチ会社のGartnerの調査によると、AWSに限らず、ソフトウェア開発全般の内製化を支持する企業の割合が高いことが分かっています。具体的には、内製化の支持率が54.4%、外部委託を支持する企業は35.4%となっており、企業にとってAWSなどのソフトウェア運用の内製化は関心の高い事項といえます。
出典:Gartner、日本におけるソフトウェア開発の内製化に関する調査結果を発表
AWSの運用を内製化するメリット
多くの企業がAWSを利用しクラウドサービスの恩恵を受けていますが、その運用を自社で内製化するとどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここでは、AWSの運用を内製化する際のメリットを3つご紹介します。
自社ニーズと課題を正確に理解し、環境変化に迅速に対応できる
AWSの運用を内製化することの最大のメリットは、自社ニーズと課題の把握と、環境変化への迅速な対応ができることです。
AWS運用を外部のプロバイダに依存している場合、プロバイダ側が提供するサービスの範囲内で運用が行われるため、自社の特定の要件や課題に適切に対応することが難しいケースがあります。
しかし、内製化することで業務の効率化やセキュリティの向上など、特定の課題に合わせたカスタマイズや最適化を実施しやすくなります。また、外部プロバイダに委託していると、AWSのサービス内容に変更があった際に、外部プロバイダを介して変更に対応しなければなりません。一方、自社で運用を内製化していると、社内で変更内容の管理や必要な調整を行えるため、環境や業界の変化に迅速に対応し、企業としての競争力の維持にもつながります。
DX達成に向けたノウハウを蓄積できる
AWSの運用を内製化することで、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するためのノウハウを蓄積できます。AWSをはじめとするクラウドサービスは、DX達成に欠かせない技術の一つであり、自社でAWSを運用する経験は、DX推進における貴重な資産となります。AWSのベストプラクティスや、最新の技術トレンドについての知識が蓄積されることで、自社での新しいプロジェクトやイノベーションへの対応力を高められます。
社員のスキルと知識を向上できる
AWS運用の内製化は、社員のスキルと知識の向上にも役立ちます。具体的には、従業員にとってAWSの設定・運用・トラブルシューティングなどのスキルを磨く機会となるでしょう。運用の実践を通して、クラウドサービスに関する知識も身に付くため、IT部門全体の技術力向上に貢献できるはずです。
AWSの内製化を進める際の課題
AWSの内製化を進める際には、次のような課題があります。
- IT人材不足
- 技術力不足
- 内製化の範囲が不明確
- リソース確保
- コスト増加
AWSの内製化には、AWSサービスの設定・運用・セキュリティ対策などの専門知識や、技術力を持ったIT人材が必要不可欠です。しかし、人材採用の競争が激化するIT市場において、優れたAWSエキスパートを採用することは容易ではありません。また、社内で技術力が不足している場合、従業員へのトレーニングや教育プログラムの実施が必要であり、これには時間と費用が発生します。
他にも、AWS内製化の範囲が不明確なまま進めると、社内で適切なリソースを分散できず、効果的な運用が難しくなるという課題もあります。特に大規模な運用では、内製化の戦略と目標を明確に設定し、計画的に進めることが必要です。また、AWSの内製化を実現するためには、初期費用やランニングコストがかかります。発生するコストと、AWSの内製化によって得られるベネフィットのバランスを考慮する必要があります。
AWSの導入ステップ
AWS(Amazon Web Services)を内製化する際、以下の手順で進めることでスムーズに導入できます。
ステップ1. AWSアカウントの作成
まずは、AWSアカウントを作成します。AWSの公式サイトへアクセスし、必要な情報を入力してアカウントを作成しましょう。入力の際には、情報の正確さと適切なセキュリティ設定を行うことが重要です。
ステップ2. マネジメントコンソールへログイン
アカウントを作成できたら、AWSのマネジメントコンソールへログインします。マネジメントコンソールとは、AWSサービスの管理画面(ダッシュボード)です。AWSの「Amazon EC2」「Amazon S3」「Amazon FSx」など、さまざまなサービスに関して、ブラウザ上で確認・操作できます。
ステップ3. 支払い方法の決定
AWSサービスの利用には、支払いが発生します。支払い方法を設定し、請求情報を入力する必要があります。クレジットカードや銀行口座などの支払い方法を選択しましょう。支払い情報の確認と設定を完了すると、AWSの利用を開始できます。
ステップ4. チュートリアルでサービスを試す
AWSを初めて利用する場合、チュートリアルを利用することをおすすめします。チュートリアルとは、基本的な操作方法を学ぶための機能です。AWSには多くのサービスがあり、それぞれのサービスの理解や活用に役立つチュートリアルが用意されています。チュートリアルを利用することで、AWSの基本的な操作やリソースの作成方法を学び、実践的なスキルを磨くことができます。
ステップ5. 本格的に利用開始
AWSの基本的な操作が理解できたら、次の手順で本格的な利用を開始しましょう。
1. リソースの作成
AWSでは、仮想サーバー「Amazon EC2」、データベース「Amazon RDS」、ストレージ「Amazon S3」など、さまざまなリソースを作成できます。必要なリソースを作成し、設定を行いましょう。
2. セキュリティ設定
AWS運用ではセキュリティ対策が重要です。セキュリティグループ・アクセス許可・IAM(Identity and Access Management)などのセキュリティ設定を適切に行い、リソースへのアクセスを制御する必要があります。
3. モニタリングとアラート設定
AWS CloudWatchなどのモニタリングツールを活用し、リソースのパフォーマンスを監視することが可能です。問題が発生した際にアラートを受け取る設定を行っておくと良いでしょう。
4. コスト管理
AWSの利用に伴うコスト管理には、請求ダッシュボードを活用することをおすすめします。リソースごとの費用を把握し、不要なリソースの削除や、リザーブドインスタンスを活用するなど、コスト最適化策に役立てられます。
5. スケーリングと運用
サービスの需要が変動する場合、自動スケーリング機能を活用することで、リソースを柔軟に拡張できるよう設定できます。また、定期的なバックアップやパッチ適用などの運用タスクも、定期的に実施することが可能です。
ここまでの手順を踏むことでAWSをスムーズに導入でき、サービスを最大限活用するための準備が整います。
AWSを内製化するにあたっての支援サービスのご紹介
AWSサービスを理解し最適な設定を行うためには、ある程度の時間と学習が必要です。必要に応じて、支援サービスの活用も検討すると良いでしょう。ここでは、AWSを内製化するにあたっての支援サービスについて解説します。
内製化支援推進AWSパートナーとは
AWSには、内製化を支援するためのソリューションを提供する「内製化支援推進AWSパートナー」が存在します。内製化支援推進AWSパートナーとは、AWSに対する深い知識と経験を持つパートナー企業です。これらのパートナーと連携することで、AWSの設計・運用・セキュリティ対策などのアドバイスやガイダンスを受けられます。2023年3月時点で、内製化支援推進AWSパートナーとして30社参加しており、毎年数社増加しています。
出典:内製化支援推進 AWS パートナーの新規参加 、関連セッション、2023 年の取り組みご紹介
内製化支援推進AWSパートナーの例
内製化支援推進AWSパートナーの例として、3社の提供サービス内容をご紹介します。
株式会社スカイアーチネットワークス
株式会社スカイアーチネットワークスは、クラウドコンサルティングおよびシステム開発の分野で幅広い経験を持つ企業です。同社は、内製化支援推進AWSパートナーとして、AWSの導入から運用までの一連のプロセスをサポートしています。主に、AWSの導入戦略の策定・セキュリティ設計・コスト最適化など、内製化プロジェクトに関する幅広いコンサルティングサービスを提供しています。
株式会社オージス総研
株式会社オージス総研は、情報システムに関する総合的なコンサルティングを行う企業であり、クラウドコンピューティング分野においても高い専門知識を保有しています。同社は、AWSを活用した内製化戦略の立案から実施までの一貫したサポートを提供しています。具体的には、クラウドアーキテクチャ設計・セキュリティ対策・リソース最適化などです。
株式会社豆蔵
株式会社豆蔵は、金融機関向けに情報システムの提供を行う企業です。クラウドコンピューティングとデータセンターサービスの分野における実績があります。同社では、AWSクラウドを活用した内製化プロジェクトにおけるアドバイザリーサービスを提供しています。クラウド戦略の策定・アプリケーションの移行・運用最適化など、AWS活用に関するサポートを通じて、ユーザー企業の内製化を支援しています。
まとめ
AWS運用を内製化することは可能であり、すでに内製化に成功している企業も多く存在します。 AWS運用の内製化には、環境変化へ迅速に対応できることや、DX達成に向けたノウハウを蓄積できること、社員のスキルと知識を向上できるといったメリットがあります。 なお、AWSの内製化を進める際には課題もあるため、自社のノウハウだけでは不安な場合は、内製化支援推進AWSパートナーの支援サービスの活用も検討することもおすすめです。 本記事でご紹介したAWSの導入ステップに沿って、AWS運用の内製化を進めましょう。
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